謁見室には、両親であるアーヴィ国王夫妻の外に、王太子である兄もいた。さらに、父の側には宰相や大臣など、主要な臣下達も控えている。

(どうしてこんなに、皆さん集まっているのかしら?)

 理由はわからないが、この顔ぶれはよっぽど重要なことをこれから話すのだろう。アリスは背筋をピシッと伸ばし、姿勢を正した。

「お父様、お母様、お待たせいたしました。アリスでございます」

 アリスは父のいる玉座へと歩み寄ると、両手でスカートを摘みお辞儀をする。父は「うむ」と一言だけ答えた。

「アリス。実はお前に、結婚の申し込みがあった」
「わたくしに、結婚の申し込み?」

 出戻りの、しかも子供ができないという疑惑付きの王女を娶ろうなど、ずいぶんと奇特な人物がいたものだ。

(どこの後妻かしら?)

 叶うことなら、年齢は五十歳以下で特殊な性癖はない人だとありがたい。

「それは、一体どこのどなたから?」

 アリスはどきどきしながら、恐る恐る父に問いかける。

「システィス国の国王──ウィルフリッド・ハースト殿だ」
「システィス国のウィルフリッド・ハースト陛下……」

 ちょうど今さっき問題集を見ながら勉強していた国名が出てきて、アリスは驚いた。