バタンとドアが開き、ウィルフリッドが入ってきた。裁判の最終判決が出て、今戻ってきたのだ。今日アリスの診察があるので、結果を気にして急いで戻って来たようだ。
 艶やかな銀髪はいつもより後ろに流れている。

「診察結果はでたか?」

 ウィルフリッドはアリスの元に歩み寄ると、彼女の両手を握る。

「はい」

 アリスは頷く。

「わたくし、赤ちゃんができたそうです。喜んでくださいますか?」

 アリスが微笑むと、ウィルフリッドは大きく目を見開く。そして、満面の笑みを浮かべた。

「もちろんだ。これ以上喜ばしいことはない。おめでとう、アリス」

 ウィルフリッドはアリスを抱き寄せると、そっとキスをする。

 柔らかな日差しが窓から差し込む。
 長い冬が終わり、システィス国に春が訪れようとしていた。
 
 <了>