「ええ、ありがとう。お通しして」

 アリスは振り返り、返事をする。

 ここ最近、アリスは原因不明の体調不良に襲われていた。ずっと微熱が続き、突然気持ち悪くなったり、日中やけに眠くなったり。心配したウィルフリッドが医師にかかるように命じ、今日はその診察日なのだ。

 医師は穏やかそうな、初老の女性だった。

「失礼いたします、妃殿下」

 問診から始まり、医師は一通りアリスの健康状態を確認してゆく。

「おめでとうございます。ご懐妊と見て、ほぼ間違いありません」
「え? 懐妊?」

 アリスは目を瞬かせる。

「まあ! おめでとうございます、アリス様!」

 部屋に控えていたエマは医師の言葉を聞き興奮気味だ。

(懐妊ってことは、赤ちゃんができたってこと? わたくしと、ウィルフリッド様の?)

 言われた言葉を理解すると、じわじわと喜びが湧き起こる。

「アリス!」