私室の窓を開けると、心地よい風が室内に流れてきた。風の冷たさが以前に比べてだいぶ柔らかい。

「だいぶ暖かくなって来たわね」
「そうですね。もうすぐ、庭園の花もたくさん咲き始めるかと」
「本当? 楽しみだわ」

 アリスはエマの話を聞き、表情を綻ばせる。

 システィス国では冬の間、花を楽しむことができない。花が大好きなアリスとしてはとても残念なので、今年の夏は温室を建築したいと思っている。温室であれば、もしかしたら花が咲くかもしれないと思ったのだ。

 それに、これが上手く行けばシスティス国で冬の間に育てられる野菜の種類を増やすこともできるかもしれない。食卓のバリエーションが格段に増えて国民の生活も豊かになるはずだ。

「そろそろ、裁判の判決も出た頃ですね」

 今の言葉にアリスは「そうね」と答えて、再び窓の外に目を向けた。


 ウィルフリッドとアリスが樹氷を見に行った日から、そろそろ四ヶ月が経つ。
 あの日、ウィルフリッドの叔父であるヴィクターは、国王の暗殺未遂の罪で逮捕された。ヴィクターは『陛下のことが心配になって様子を見に追いかけただけだ』と無罪を主張しているが、誰が聞いても苦しい言い訳だ。それに、ヴィクターが氷と水の異能を持っていることは、あの場にいた全員が目撃した。

『まさか異能を持っていることを隠しているとは全く気がつかなかった』