(死んじゃう!)
目の前に迫った雪崩にアリスがぎゅっと目を瞑った瞬間、周囲の近衛騎士達が「おおっ!」と叫ぶのが聞こえた。
(死んでない?)
恐る恐る目を開けたアリスは目の前の景色に驚いた。押し寄せてきた雪崩は、氷になってその場で固まっていた。
(すごい。これがウィルフリッド様の異能?)
水や氷を操る力があるとは聞いていたが、実際にそれを見たのは初めてだ。飲み物用の氷を作ることなどを想像していたので、スケールの大きさに驚いた。
ウィルフリッドの元に、一羽の鷹が舞い降りる。ウィルフリッドは鷹の足に結ばれた手紙を取ると、それを読んだ。
「やはり、予想通りだ。妃と樹氷を見に行った国王は雪崩に巻き込まれて事故死か。なかなかよい筋書きだ」
ふっと笑ったウィルフリッドは、冷徹な眼差しを来た道の方向に向ける。
「それでは、反撃といこうか」
「え?」
「行くぞ」
「「「はいっ!」」」
近衛騎士達が一斉にそりに乗り込む。アリスもウィルフリッドに促され、慌ててそりに飛び乗った。
そこからは、ウィルフリッドに付いていくので精いっぱいだった。そりは猛スピードで山を下り、馬を係留していた地点に到着する。