ウィルフリッドが選んだ行き先は、王都から北に向かって半日ちょっとかかる場所だった。三時間ほど馬車に揺られ、その後はトナカイの牽くそりに乗り変える。

「馬車ではなくそりなのですね」
「ここから先は雪が深い。馬車だと車輪が嵌って動けなくなってしまう」
「なるほど」

 同行する騎士達も皆、ここの駐屯地で馬を預けてトナカイのそりへと乗り変えていた。システィス国の馬は寒冷馬と呼ばれる元々寒さに強い品種なのだが、それでもこれ以上北に行くのは厳しいのだという。

「アリス。来い」

 ウィルフリッドに手招きされ、アリスはそりに乗り込む。ウィルフリッドが手綱を引くと、トナカイたちが動き出した。

「わあ、すごい」

 馬車とは違い屋根のないそりは視界が開けている。一面の銀世界に、アリスは感嘆の声を上げる。はあっと息を吐くと、凍り付いた水分が太陽を反射してキラキラと煌めいた。

「アリス。見て」

 ウィルフリッドが進行方向を指さす。目を凝らすと、木々に白い氷が付き、まるで雪のオブジェのように見えた。

「あれが樹氷ですか? 綺麗だわ」