突然のことに、アリスは困惑する。

「雪だるまの妖精かと思った」
「……雪だるま?」

 一瞬何を言われたのかと思ったが、ウィルフリッドもまたアリスがもこもこで雪だるまみたいだと思ったということだと理解した。

「やっぱり不格好だから、少し脱いで──」
「不格好じゃない」

 服を脱ごうとしたアリスを、ウィルフリッドが止める。

「まるで雪だるまの妖精のようで可愛いと言っているだろう」

 雪だるまと言われるのがいまいち納得いかないが、ウィルフリッドがどうやらこの格好のアリスを気に入っているようだということはわかった。

「可愛いから問題ない。このまま行こう」
「ウィルフリッド様がそう仰るなら──」

 アリスはどこか釈然としない思いを抱えながらも、ウィルフリッドの差し出した手に自分の手を重ねる。手袋二枚重ねでほぼ動きの自由を失った手を、ウィルフリッドはきゅっと握り締める。

 その後ろ姿を見つめながら、エマは笑いをこらえて肩を揺らしたのだった。