「まあ、よろしいのではないでしょうか。アリス様は寒がりですので。多少不格好ではありますが、暑ければ脱げば済みますから」

 そう言ってくれるエマも、笑いをこらえているのか口元が震えている。

「エマ。今、笑ったでしょ」

 アリスはじろっとエマを見る。

「そんなことはございません。とても可愛らしいと思っておりました」

 エマは真顔に戻ると、すんとした顔でそう言う。

(絶対笑っていたわ。やっぱり、これだと着こみすぎ──)

 そう思ったそのとき、ガチャッと部屋のドアが開く。

「アリス、そろそろ出発するぞ。準備はでき──」

 ドアノブを握ったまま、ウィルフリッドの動きが止まる。視線はアリスに釘付けだ。
 アリスと視線が絡み合うと、ウィルフリッドは口元を手で押さえ、ふいっと視線を外した。

(もしかして、あまりにひどい格好に呆れられた⁉)

 ショックを受けたのも束の間、ウィルフリッドはつかつかとアリスに歩み寄り、がしっと彼女を抱き締める。

「可愛い……」
「ウィ、ウィルフリッド様⁉」