(そうだわ! これって、わたくしにしかない武器になるのではないかしら?)

 アリスはハーレムの妃たちとの交流で、多くの国の元王女と知り合いになり、祖国の様々な話を聞いた。マイナーな言語も日常会話であれば喋ることができるし、各国の王族に知り合いがいる。

 こんな人材が他にいるだろうか。いや、いない!

 思いついたら善は急げ。アリスは早速兄に相談することにした。

「お兄様。いらっしゃっていただいて早々申し訳ないのですが、折り入って相談があります。わたくしのこれからのことです」

「アリス。心配しなくてもいい。お前は好きなだけここにいていいんだ」

 修道院にでも送られると心配をしているとでも思ったのか、兄は沈痛な面持ちで首を振る。

「ええ。ここにはしばらくいるつもりです。わたくし、決めました。外交官になります!」
「……はあ⁉」

 兄のどこか抜けた声が、部屋に響いた。