薄暗い寝室で、ウィルフリッドは自分に寄り添ってすやすやと眠るアリスを見る。
 ウィルフリッドが身じろぐとそれに合わせてぴったりと付いてくる姿に、思わず笑みが零れる。

(可愛いな)

 愛おしくて、いつまででも見つめていられる。

 しばらくすると、髪と同じはちみつ色の長いまつ毛が揺れた。

「おはよう。体は大丈夫か?」
「え?」

 アリスは呆気にとられたようにウィルフリッドの顔を見つめ、数秒後には首まで真っ赤になる。布団を必死にかき集めて体を隠そうとしている姿にも、愛しさを感じた。

「まさか初めてとは思っていなくて、無理をさせた」
「言わないでください!」

 真っ赤になったアリスはウィルフリッドの口を自分の手で塞ぐ。数時間前の凛とした姿とのギャップに思わずクスッと笑いが漏れた。

 アリスにとって、ウィルフリッドとの結婚は再婚だ。
 七年間もハーレムにいたのだから、当然前の夫であるビクルス国の前王太子とはそういう関係もあったのだとウィルフリッドは思っていた。しかし、いざ抱いたアリスは純潔だったのでウィルフリッドはたいそう驚いた。

 どういうことかと困惑したが、アリスから前の夫が年上好きだったと聞いて神に感謝したのは言うまでもない。