アリスの言葉に、ウィルフリッドは目を伏せる。

「俺は、幸せになっていいような人間ではないんだ。俺の血は穢れている」
「穢れていません。その証拠に、陛下はいつもわたくしに優しくて、臣下達にも慕われています。もし陛下の血が穢れているというなら──」

 アリスはそこで一息置く。

「私はむしろ、あなたに穢してほしい」

 ウィルフリッドは目を見開く。

「俺がこれまでどれだけ我慢してきたと」
「我慢しないでください。どんなあなたも、わたくしは愛しています」

 まっすぐに告げられ、ウィルフリッドは息を呑む。

(彼女は、美しいな)

 凛としたアリスのことを、心から美しいと思った。こんな自分が手を出してしまっていい存在ではないと思う一方で、ここまで言ってくれたのに応えないなどありえないとも思った。

「今嫌だと言ってくれないと、後戻りできない」
「嫌ではありません」

 はっきりと言い切ったアリスの態度に、ウィルフリッドはフッと笑みを零す。