「ウィルフリッド様が連れて行ってくださる場所なら、どこでも嬉しいです」

 アリスはウィルフリッドを見上げ、微笑む。その笑顔を見ると、つい頬が緩んだ。

(可愛いな)

 視線が絡むと、アリスは何かを言いたげな顔をしてウィルフリッドを見つめる。

「どうした?」
「陛下は──」
「何?」
「陛下はどうやったら、わたくしのことを女性として見てくださるのですか?」

 想像すらしていなかった質問に、ウィルフリッドは呆気にとられる。

「は? 何を言って──」
「だって、もうずっと一緒に夜を過ごしているのに指一本触れてくださらないじゃないですか。わたくしだって、ひとりの女性として見られたい」
「我慢しているからだ。自分から触れたら、もう止められないから」

 いつだってアリスには触れたかった。その白い肌に口づけて、思う存分愛したかった。
 しかし、それを止めるのはウィルフリッドの中の忌まわしいあの記憶だ。父と兄を殺した自分に、幸せになっていい資格などないと思っていた。

「止めなくても構いません」