◇ ◇ ◇

 何度考え直しても、違和感が拭えない。ウィルフリッドはもう何回読み返したか分からないぐらい読み込んだ、アリスが吹雪に見舞われた事件の報告書を読み返していた。

(あのときと、似ている)

 気温の寒暖差はあるものの、アリスが吹雪に見舞われた一件はウィルフリッドの父と兄が吹雪で亡くなったあの忌まわしい事件と、状況が酷似していた。

 さらに解せないのは、ウィルフリッドがアリスを助けに行ったとき、一旦収まった吹雪がまた猛烈に吹き荒れたことだ。まるで、アリスとウィルフリッドを狙い撃ちしてるかのように。

 こんなことをできるのは、異能を持っている者だけだ。そして、今現在異能を持っている者はウィルフリッドしかいない。

(また俺が異能を暴走させたのか? いや、そんなはずはない)

 十三年前とは違い、ウィルフレッドは自分の意思に合わせて異能の力を操ることができるようになっている。
 アリスが吹雪に襲われたとき、ウィルフリッドは王宮で会議中だった。特に精神的に動揺していたわけでもなければ、体調に異常があったわけでもない。だから、絶対に暴走などさせていないと断言できる。

(となると、考えられるのはやはり──)

 頭を抱えたそのとき、「ウィルフリッド様!」と愛らしい呼び声がした。お茶会に出かけていたアリスが帰ってきたのだ。

「ただいま戻りました。今日は息抜きの時間をくださりありがとうございます」