アメリアはハッとしたように口元に手を当てる。

「……アリス様。もしかしてご懐妊?」

 思わぬ問いに、アリスは思わずゲホゲホと咳き込む。

「アリス様、大丈夫ですか?」

 アメリアは慌てたようにアリスの背中をさすった。

「申し訳ございません。突然、懐妊などと言われたので、びっくりしてしまって」
「あら。でも、アリス様はお若いし、いつご懐妊してもおかしくないのではなくて?」
「それはそうなのですが……こればっかりは、授かりものですので」

 アリスは曖昧に笑う。

 ウィルフリッドとは未だに白い結婚のままだ。彼は頻繁にアリスにキスをするようになったが、それ以上は触れようとしない。だからアリスは、きっと自分は女性としては見られないのだろうと思った。

(子供か)

 どうしても初夜に『子は望むな』と言われたことを思い出してしまうし、そもそもそういう行為をしていないのだから子供などできるはずもない。けれど、アリスの中でいつかウィルフリッドの子供を産みたいという気持ちは日に日に強くなる。