アリスはドレスのスカートを両手で抓み、よく見せるようにポーズして見せる。
今日着ているのは、ウィルフリッドがプレゼントしてくれた薄水色のドレスだった。厚手の生地で保温性を持たせているが、生地の薄水色の効果で暑苦しくは見えない。最近のアリスの一番のお気に入りだった。
「まあ、そうなのね! 自分の瞳に似た色を贈るなんて、ウィルもなかなか隅に置けないわね」
アメリアは、アリスとウィルフリッドがうまくいっている事を感じ取り、とても嬉しそうだ。
アリスとイリスが着席すると、屋敷の侍女たちが次々にお菓子を運んできた。テーブルの上が、あっという間に色とりどりの焼き菓子でいっぱいになる。
(美味しそう……だけど……)
吹雪に見舞われて以降、なんだか食が細くなってしまった。
アリスは、用意された紅茶を一口飲む。イリスはそんなアリスの様子を不思議そうに見つめた。
「アリス様。先ほどからあまり食が進んでいないようですが、食欲がないのですか?」
イリスからの指摘に、アリスはハッとする。
「そういえばそうね。いつもならもっともりもり食べるのにどうしたの?」
アメリアもアリスに視線を向け、目を瞬く。
「そんなことないわ。とても美味しくいただいております」
アリスはにこっと笑い、ちょうど目の前のトレーに置かれていたクッキーをつまむ。おそらく、体調を崩した影響であまり食事を摂れなかったので食が細くなってしまったのだが、それを言うと二人を心配させてしまうだろう。
「本当に? あっ」