事件から二週間が経つころには、アリスはすっかり元気になった。
 あれ以降は不思議な吹雪も発生しておらず、王宮はすっかりと平穏を取り戻している。

 朝食の席で、アリスはたまごスープを口に運ぶウィルフリッドを窺い見る。

「ウィルフリッド様。本日はイリス様にご招待されてノートン公爵家に行ってまいります。アメリア様も参加されるので、ご一緒させていただく予定です」
「叔父上の屋敷に? そうか、楽しんでくるといい」

 ウィルフリッドはスプーンを運ぶ手を止め、にこりと微笑む。

「はい」

 アリスもつられるように微笑んだ。
 先日ヴィクターを訪ねたとき、彼はアリスの気晴らしになるようにお茶会でも開くように妻に伝えると言っていた。その言葉通り、数日前に『お茶会を開催するので是非来て欲しい』とノートン公爵夫人であるイリスから招待状を受けとった。

 たまたま招待状が届いたとき、アリスは王宮にお見舞いに来てくれていたアメリアとお茶を飲んでいる最中だった。お茶会のことを知ったアメリアは自分も行きたいと言い出し、アリスも是非にとそれを望んだので、結局二人で参加することになったのだ。

(イリス様ってほとんどお話したことがないけど、アメリア様がいるなら安心ね)

 実は、イリスには若干苦手意識がある。以前話したときに他の夫人たちの前でハーレムの話を持ち出されて以来、なんとなく苦手になってしまったのだ。

「万が一何かが起こったときのために、近衛騎士は多めに連れて行け。あと、防寒もしっかりとな」

 万が一何かが起こったときのため、と言われてすぐに、先日の吹雪のようなことを警戒してるのだとわかった。

「はい。承知いたしました」

 アリスは唇を引き結んで頷いた。