「システィス国でも、就学率を100%にすることができないかしら?」

 アリスは腕を組む。だがそれを実現するには、学校の整備や教師の補充などやるべきことがたくさんある。

「まずは陛下にご相談……いえ、やっぱりヴィクター様にご相談してみましょう」

 ウィルフレッドには先ほど、ゆっくり寝ていろと言われたばかりだ。彼のことだから、アリスがこの書類を持って訪ねてきたら、きっと呆れて書類ごと没収してしまうだろう。

「あら、アリス様。もう起きて大丈夫なのですか?」

 ふいに部屋のドアが開く。そこにいたエマは、てっきり寝ていると思ったアリスが起きていて驚いた様子だ。

「エマ。ええ、もう大丈夫。心配かけてごめんなさいね」

 アリスはエマを安心させるようにふわっと笑う。

「ねえ、エマ。少しだけヴィクター様のところに行きたいから、準備を手伝ってくれる?」
「もちろんでございます」

 エマも微笑んだ。

 アリスはエマに手伝ってもらい、簡単に髪を整え、ゆったりした楽なドレスを着替える。最後に毛皮のショールを羽織ると、早速ヴィクターの元を訪れた。