「どういうことなんだ……」

 ウィルフリッドは、顎に手を当てて考え込む。
 自分のあずかり知らぬところで、何かが動いている。そんな嫌な予感がした。

 ◇ ◇ ◇

 ベッドで上半身を起こして本を読んでいると、ふいにドアが開いた。現れたのはウィルフリッドだ。

「アリス。調子はどうだ?」
「陛下! 体調は、とても良くなりました。熱ももう下がってすっかり元気なのに、エマがまだダメだって言うんです」

 アリスはそう言い終えるや否や、ゴホゴホッと咳をする。まだ喉の調子は完全回復とは言えない。

「咳が出ているじゃないか。エマの言う通り、完全に回復するまでゆっくりしておけ」
「はい」

 アリスは素直に返事しながらも、しゅんとする。もう一週間もベッドに寝てばっかりで、そろそろ体を動かしたいのだ。
 ヴィルフリッドはそんなアリスの様子を見て眉尻を下げた。

「そんな顔をするな。すぐに良くなる」