「はい。四人全員に対して別々に聴取しましたが、皆同じことを言っておりました。晴れていた空がものの数十秒で雲に覆われ、あっという間に吹雪になったと。それも、前が見えないほどの猛吹雪であっという間に馬車は立ち往生してしまったと」
「……妙だな。聞けば聞くほど、異能を使ったようにしか思えない」
「はい。私もそう思いました」
「だが、俺は使っていない」

 ウィルフリッドは断言する。

 異能が発現したばかりの十三年前ならいざ知らず、今はしっかりと異能の力をコントロールできている。異能の暴走はしていないと断言できる。

「となると、原因が分からない」

 ウィルフリッドは当時の状況を思い出しながら、口を開く。

「実はアリスを助けに行ったとき、妙な力を感じたんだ」
「妙な力、と言いますと?」

 ロジャーは聞き返す。

「吹雪を止めようとする俺に対し、まるで反発するような力を感じた」
「反発するような? それは別の何者かが異能を使ったということですか?」

 ロジャーは眉を顰めた。

「しかし、異能の力を持つのは、現在ウィルフリッド様だけです」

 システィス国の王族に伝わる異能の力。それは初代国王が聖霊王の盟友であったことから、彼の能力を一部託されたことによると言われている。異能の力を発現するのがシスティス国の王族直系のみ、しかもごく稀だ。現在も異能の力を持つのはウィルフリッドひとりしかいない。