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 執務室にいたウィルフリッドは、窓を揺らす風の音で顔を上げた。寒冷地のためシスティス国の窓は二重窓構造なのだが、それでも音が聞こえてくる激しさだ。

「今日は吹雪か」

 システィス国では冬の間、時折こういった猛吹雪に襲われることがある。大体一日で収まるので、こういう日は外に出ないに限る。

 立ち上がったウィルフリッドは窓の外を見る。激しい雪で視界は閉ざされ、十数メートル先にあるはずの尖塔すら認識できない。

「陛下。失礼します」

 ノックと共に入室してきたのは、側近のロジャーだ。ロジャーは手に書類を持っていた。

「今日は酷い吹雪ですね。明日は騎士や衛兵達を総動員して雪かきだな」

 ウィルフリッドが窓の外を眺めているのに気づいたロジャーも窓に近づき、肩を竦める。吹雪になると雪が積もるため、道路が使えなくなる。そのため、主要な幹線道路は使えるように雪かきをするのだ。

(吹雪か)

 ウィルフレッドは右手に神経を集中させる。その手を窓に向けて大きく振ると、城下から王宮へと続く幹線道路の雪が一瞬で消え去った。ウィルフリッドが持つ、異能の力だ。

「うわ。相変わらず凄いですね」