「──というわけで、戻ってまいりました」

 ここはアーヴィ国の王宮の謁見の間だ。故郷に戻ったアリスは、まず父であるアーヴィ国王に挨拶に行った。

「うむ。話はビクルス国の使者から大体聞いている。災難だったな」

 久しぶりに会う父は、アリスの記憶の中の姿よりも白髪が多くなっていた。七年というときの流れを感じる。

「ひとまず、ゆっくりと過ごすといい。今後のことはゆっくり考えればよい」
「ありがとうございます。お心遣いに感謝いたします」

 アリスはお辞儀をして、父に感謝を伝える。
 アーヴィ国とビクルス国の両国の友好の印として王太子に嫁いだはずなのに、七年でハーレムを追い出され、戻ってきた娘。もしかしたら呆れられ、早々に出て行けと言われるかもしれないと覚悟していた。

 しかし、父から掛けられたのは優しい言葉だ。

「嫁ぐ前にお前が使っていた部屋は、今も空いている。そこを使いなさい」
「はい。かしこまりました」

 アリスはもう一度深々とお辞儀をしてから、部屋に向かったのだった。