システィス国は寒さが厳しいという欠点があるものの、国土が広く、資源が豊かだ。多くの国がその資源を欲しがるので、経済的には潤っている。
 
「叔父上、私は考えなしに物事を進めようとするほど子供ではありません。既に議員の七割がこの施策を進めることに賛成している」

 ウィルフリッドはヴィクターを見つめる。

 国王に即位した幼いウィルフリッドを補佐して実質的に国を回していたのは、他でもないヴィクターだ。しかし、あれから十年以上が経ち、ウィルフリッドはもう子供ではない。
 しかし、ヴィクターは未だに当時の感覚が抜けないようで、ウィルフリッドが自主的に何かを進めようとするとすぐにそれを止めさせようと横槍を入れてくる。自身が関わらない施策を行うのは不安なのかもしれない。

「叔父上の今までのご尽力には深く感謝しています。そろそろ、少しゆっくりと休まれてもいいかもしれません」
「私は必要ないと?」
「そうではありません。ただ、もう少し私を信頼していただきたい」

 ウィルフリッドの言葉にヴィクターは顔をぴくっとさせる。

「……そうかもしれませんね。数日間、お休みをいただくとしましょう」
「ああ。ゆっくりするといい」
「お心遣いに感謝します」

 慇懃な態度でお辞儀をしてから立ち去ったヴィクターの後姿を、ウィルフリッドは見送った。