ウィルフリッドはそれだけ言うと、ベッドの上に乗る。いつものようにアリスの隣、ちょうど十センチくらい離れた位置に横たわる。

「おやすみ」
「はい、おやすみなさいませ」

 アリスはウィルフリッドを見る。彼はアリスに背を向けるようにして寝ていた。

(今日も指一本触れてくださらない)

 アリスはしゅんとする。手を伸ばせば背中に届く距離なのに、彼のことがとても遠く感じた。