アリスはぶんぶんと首を左右に振る。こんなはしたない格好、恥ずかしすぎて絶対に無理だ。

「そうですか? 絶対に陛下はお喜びになると思いますが」
「うーん、でも……やめておくわ」

 万が一ウィルフリッドに淫乱な女とでも思われたら、それこそショックすぎる。
 それに、アリスには男性と性的な意味で触れ合った経験が一度もない。これを着たところで、どうやって誘えばいいのか皆目見当もつかない。

 アリスは今日届いたばかりの寝間着をクローゼットにしまうと、いつもの白いシルクの寝間着を着たのだった。

 夜も更けた頃、アリスはベッドの上でうとうとと微睡む。カチャッと音がして部屋に入ってきたのは、ウィルフリッドだ。

「お疲れ様です」

 アリスが言うとウィルフリッドは「ああ」とひと言だけ言った。

「今日は姉上のところに行くと言っていたな。楽しかったか?」
「はい、とても」
「どんな話を?」

 ウィルフリッドに尋ねられ、アリスは頬を赤らめる。どうやったらウィルフリッドに女性として見てもらえるかを相談していただなんて、絶対言えるはずがない。

(部屋が薄暗くてよかったわ)

 アリスは内心でほっとする。ウィルフリッドに赤くなった顔を見られずに済むから。

「美味しいお菓子をご紹介していただきました」
「へえ、よかったな」