アメリアの表情からこれは普通ではないのだと悟ったアリスは少なからずショックを受けた。
 朝起きたらアリスがウィルフリッドに抱きついていることは日常茶飯事だが、ウィルフリッドから触れてくれたことは一度もない。

 ハーレムにいた際は女しかいないので、男女の明け透けな話も多かった。そこで、『ベッドに誘い込んで肌を触れあえば男は簡単に流される』と聞いたことがある。しかし、触れあうどころか抱き付いてもウィルフリッドは全くリアクションなしだ。

「あのヘタレが……」
「はい?」

 アメリアが呟いた言葉がよく聞き取れず、アリスは聞き返す。アメリアは慌てたように「あら、なんでもないのよ」と言った。

「アリス様、わたくしに名案があります。少しだけお時間くださいませ」

 アメリアはその顔に美しい微笑みをーー浮かべた。




 その日の夜、アリスはとても困惑していた。

「──本当にこれを着たら?」
「ええ、間違いありませんーー」

 エマは力強く言い切る。
 アリスはにわかには信じられず、目の前の衣装を眺める。ピンクがかった薄地の布はうっすらと透けており、至るところにレースやリボンが飾られている。結び目はリボンだけでひどく心もとなく、指をかければ簡単に脱げてしまうだろう。

 なんでも、アメリア厳選の男性を誘う寝間着だそうだ。リボンのかかったプレゼントが届いたので何かと思って開けてみたら、これだった。

「無理よ」