そう言ったときの彼の冷ややかな、けれどどこか孤独を匂わせるような瞳。アリスはそれに対して、構わないと承諾した上で結婚した。
 それなのに、今になってウィルフリッドから愛されたい、彼の子供を産んでみたいという欲が湧いてしまっている。

(でも──)

 一緒に寝ているにもかかわらず指一本すら触れてくれないのだから、それ以上進みようもない。

(もしかしてわたくし、女性としての魅力がない?)

 衝撃の事実に気付いてしまい、アリスは愕然とする。ハーレムのときに『ベッドで一緒に寝て手を出さない男などこの世にいないわ』と言ったのは、確か豊満な体つきの艶めかしい妃だった。
 ということは、手を出されないアリスは悪い意味で希少な存在ということだろうか。

「今日はアメリア様のところでお茶会ですので、こちらはいかがでしょう?」

 エマは華美すぎない長袖のドレスをアリスに見せる。淡い黄色で、見た目も暖かそうだ。

「ありがとう」

 アリスは袖に腕を通しながらも悩む。

(アメリア様にご相談してみようかしら?)

 彼女なら、何かヒントをくれるかもしれない。