極寒の地にある国故、冬になると移動の馬車の車輪はそりに変わるとか、水が凍るので水路は地下に作るとか、色々な食べ物を凍らせて冬場はそれを少しずつ食べるとか、アリスの知らないことが盛りだくさんだった。

「アリスが雷の日にちゃんと眠れるか、心配だわ」
「雷が鳴りそうな日は、窓を全部閉めて布団を頭からかぶって眠るわ」
「まあ、ふふっ」

 ケイトは力強く言うアリスを見つめ、くすくすと笑う。
 雷が大の苦手であるアリスを心配して、ケイトはよく雷の日に一緒にいてくれた。正直言うとちょっと、いや、だいぶ不安だが、雷のために他国の王女であるケイトをアーヴィ国に連れて帰るわけにもいかない。

「元気でね」
「ええ。アリス様も、道中気を付けて」

 アリスは動き出した馬車の窓から顔を出し、徐々に小さくなるケイトに大きく手を振った。

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