魘されていたウィルフリッドの苦し気な表情が蘇り、心配になる。確か以前、眠りが浅くほとんど寝ないとも言っていた。

 ウィルフリッドは周囲に自分の弱さを見せようとしない。それは国王としての威厳を守るうえで大事なことであることはアリスも理解している。けれど、いつも気を張っていて夜も寝られないのでは、いつか倒れてしまう。

(心配だわ)

 せめて、魘されているときに横に寄り添ってあげられれば先ほど膝枕したときのように、ウィルフリッドを穏やかな睡眠に導いてあげることができるかもしれない。

 しかし、ウィルフリッドはアリスに愛と子供は望むなと言った。初夜以降、夜も共にしていないのでそれも難しい。一緒に眠ることができれば、なんとかすることもできそうなのに。

(そうよ! 理由は何でもいいから、一緒に眠るように誘導すればいいのよ!)

 理由など、こじつければなんとかなるはずだ。


 ◇ ◇ ◇

 一方のウィルフリッドは、アリスと別れたあと執務室に戻った。

 先ほどのアリスとのやり取りを思い出し、ウィルフリッドはため息を吐く。

(気が緩んでいた)

 人前でうたた寝するなど、ましてや膝枕をしてもらって寝たことなど初めてのことだ。目を覚ましてアリスの青い瞳と目が合ったときは本当に驚いた。
 何事かとすぐに飛び起きたが、だんだんと頭が冴えてくるのに従い、記憶も鮮明になる。