『詳細は不明ですが、救助に当たった者達の情報によるとごく局所的に猛吹雪が起きていたそうです』
『一体なぜそんなことが!』
『わかりません。恐らく、特別な力が関与し、暴走してしまったのではないかと──』
『特別な力が関与し、暴走……?』

 ヴィクターはそれ以上明言せず、口を噤む。しかし、ウィルフリッドは自分の異能が関与している可能性が高いと言われているのだと即座に悟った。

(嘘だ……)

 しかし、水の精霊の加護を受けた異能はおろか、現在異能を発現している王族はウィルフリッドただひとり。状況的に、ウィルフリッドが原因としか思えなかった。

『嘘だ……』

 頭が混乱して、これしか言葉が出てこない。
 息が苦しい。
 絶望で、何も考えられない。

 ふと、優しい手が額に触れた。

(誰だ?)

 顔がよく見えない。けれど──。

 その手に触れられた途端、心が落ち着いた。