『父上と兄上は無事ですか?』

 アメリアに尋ねると、彼女の顔はさっと強張る。

『大丈夫。あなたのことはお姉様が絶対に守るから──』
『何があったのですか?』
『それは……』

 明らかにうろたえたような態度に違和感を覚え、部屋を飛び出す。

『ウィル、待って! 待ちなさい!』

 アメリアが制止する声が聞こえたが、無視して走った。大急ぎで父の執務室に向かったウィルフリッドが見たのは、信じられない光景だ。

『これは、弔旗?』

 弔旗は、主が亡くなったときに弔いの意味で掲げる旗だ。
 嫌な想像が、脳裏を過る。
 そのとき、叔父──ヴィクターの姿が見えてウィルフリッドは『叔父上!』と走り寄った。ヴィクターは驚いたように目を見開く。

『殿下。意識が戻られたのですね。不幸中の幸いです』
『それより、何があった!』
『局所的な猛吹雪が発生しました。残念ながら、陛下と王太子殿下は──』

 ヴィクターは沈痛な面持ちで首を横に振る。
 その瞬間、嫌な想像は現実のものになったのだと悟った。信じられない思いで、呆然とヴィクターを見返す。