(なんとか──)

 寒さのせいか、段々と意識が薄れてくる。

『水の聖霊よ。力を貸してくれ』

 当時、まだ力が発現したばかりの水の異能を使おうと精霊に呼びかける。
 ふわっと空気が揺れ雪が弱まったが、数秒後にはまた猛烈な吹雪が襲ってくる。

(くそっ、力が足りない)

 異能を使ったことで体力が奪われ、意識がさらに遠のく。

『兄上、父上、起きてください。意識をしっかり!』

 ウィルフリッドは朦朧としている父と兄を必死に呼び、体を揺らす。

「兄上! 父上!」

 なぜ二人とも朦朧としているのか理解できなかった。一刻も早く城に戻らなければならないのに、異常な眠気がウィルフリッドを襲う。

「兄上、父上……」

 ウィルフリッドはふたりに手を伸ばす。そのまま意識は闇に吞まれた。

 気づくと、王宮の自分の部屋にいた。自由にならない体に鞭打って起き上がろうとすると、至近距離から『ウィル! 意識が戻ったのね』と感極まったような声がした。

『……姉上?』

 ぎゅっと抱き締めてきたのは、姉のアメリアだ。アメリアは『よかった』と言いながらぼろぼろと泣いていた。