ウィルフリッドが歩き出したので、アリスは慌ててあとに続く。

 そのとき、靴のつま先が石畳に引っかかり体がぐらりと前に傾いた。

(転ぶ!)

 咄嗟に手を突こうとしたが、その手が地面に着く前にアリスの体はふわりと浮いた。

「大丈夫か?」

 アリスのお腹に片手を回したウィルフレッドが、彼女の顔を覗き込む。

「はい。ありがと──」

 ありがとうございます、と言おうとしてウィルフリッドのほうを見たアリスは、その距離の近さにドキッとする。

 体を起こせば鼻先が届きそうな距離感に、心臓が早鐘のように鳴る。

「申し訳ございませんっ」

 アリスは慌てて、ウィルフリッドと距離を取る。

「謝らなくていい。行くぞ」
「はい」

 アリスはウィルフリッドの後ろにおずおずと続く。彼は振り返って手を差し出した。

(……?)

 アリスが目を瞬かせると、ウィルフリッドは自然な所作で彼女の片手を取った。