「陛下。ありがとうございます」

 店を出たアリスはウィルフリッドにお礼を言う。

「構わない」

 ウィルフリッドは懐から懐中時計を取り出す。

「まだ時間があるから、庭園でも行くか?」
「え?」

 アリスは驚いて、まじまじとウィルフリッドを見つめる。今日は買い物に付き合ってくれただけでも驚いたのに、まさか更に庭園にまで誘ってもらえるとは思っていなかったから。

 ウィルフリッドはアリスの反応にハッとしたような表情をし、気まずそうに視線を逸らす。

「気が進まないならいい」
「いいえ。行きたいです! 行きます!」

 勢いよく主張するアリスの様子に、ウィルフリッドがフッと笑う。

(今、笑っていらっしゃった?)

 普段見ない表情に、胸がどきんと跳ねる。

「では、行こうか。遅咲きの秋桜の名所があるんだ」