「ですが、納品までにだいぶ時間をいただいてしまいます。よろしいでしょうか?」

 仕立て屋はおずおずとアリスに尋ねる。サイズ直しの調整をするだけの他の商品と違い、このドレスは一から作る必要があるのだろう。

「構わないわ」

 アリスは頷く。

「いいのか?」

 念を押すように、ウィルフリッドがアリスに尋ねる。

「はい。だって、陛下に選んでいただいたものですから」

 アリスが笑顔で告げると、ウィルフリッドは僅かに目を見開く。

「そうか……」

 ふいっと目を逸らされる。

「では、それとは別にすぐに納品できる品も頼もう」
「かしこまりました」

 何着か選ぶと、仕立て屋は気が変わらないうちにとばかりに、注文書を記入する。一気にドレスの発注が複数入り、ほくほく顔だ。

「妃殿下は採寸のため、隣のお部屋へ」

 仕立て屋の職員がアリスを隣室へと招く。
 別部屋で採寸を行ってからアリスがウィルフリッドのいる部屋に戻ると、彼は仕立て屋の主人と何か話し込んでいた。

「では、そのように手配させていただきます」

 仕立て屋の主人はアリスが戻ってきたことに気づくと、そう言って話を終わらせる。きっと、ドレスをいつどこに運ぶかなどを話していたのだろう。