目を覚ましたら、とびきり美形な男が隣に寝ていた。

(え? 誰?)

 昨日は確かにひとりで寝たはずなのに。

 混乱する頭を整理して、だんだんと記憶がよみがえる。
 アリスは昨日結婚し、昨晩は初夜だった。ところが、深夜になっても夫──ここシルティス国の若き国王であるウィルフリッド・ハーストが一向に現れなかった。
 初夜なのにまさかの放置プレーかとやけ酒したところまでは覚えているが、その後の記憶が一切ない。頭を襲うずきっとした痛みに、思わず額に手を当てた。

(まずいわ。なんとかしないと)

 初夜に飲んだくれて記憶がないとは、なんたる失態。なんとか挽回しなければ。
 アリスは背筋を伸ばし、佇まいを直す。

「おはようございます、陛下」
「おはよう、アリス」

 昨日アリスが結婚した相手──ウィルフリッドは青い瞳でアリスを見つめ、気だるげに銀髪をかき上げる。

「まさか初めての朝に、顔を見るなり妻に悲鳴を上げられるとは思ってもみなかった」

 ウィルフリッドはふっと笑う。