壁は汚れていて、屋根はベニヤ板で補強されている。教会のような建物で、いかにも幽霊とかが出てきそうな建物だった。教練場の施設でもここまで酷くなかったと思う。俺は「こんな建物が拠点なわけないよな。二葉(ふたば)もう一回周りを見に行こうぜ。」というと二葉(ふたば)が「そうですね~、千輪(せんり)さんの言う通りこんな場所じゃないですよね。住所間違ってるんじゃないですかね。」と言った。俺と二葉(ふたば)はどうしても受け入れられない様子を横目に荒切(あらきり)は俺達に「アホくさ」と言い捨て、扉に向かった。
 荒切(あらきり)が扉の前にたった瞬間、ドンッ!!という音とともに、扉が勢いよく開きさっきまでそこに立っていた荒切(あらきり)は少し離れ所に吹っ飛び「あぶねーなぁ!!」と叫んでいた。扉の奥には誰かが立っているのが見えた。するとそいつは「ようこそ!黒龍(くろたつ)班へ!歓迎するよ。」と俺達に声をかけた。そいつは俺より身長が大きくだいたい170cmはある、白髪ぱっつん頭の男性に歓迎された。その白髪ぱっつんは続けて「さあ、入ってくれみんなが待っている。」というと俺達を置いて奥に行ってしまった。俺達は慌てて後を追った。
 中に入ると長い廊下が続いていた。少し薄暗く、壁には傷があった。すると突然白髪ぱっつんが「えっと、ここは魔法防衛隊の黒龍(くろたつ)班で、南区を担当しているんだけど…」と言いこちらの様子をうかがうと突然、「復習といこう!」と言い出した。
 「魔法防衛隊は全部で何班あるかな?二葉(ふたば)ちゃん。」その問いに対して二葉(ふたば)は「えっと、10班です。東区、西区、南区、北区、北東区、南東区、南西区、北西区、中央東区、中央西区の計10区をそれぞれの班が担当しています。」と答え「素晴らしい!」と白髪ぱっつんは二葉(ふたば)を褒めた。次は俺の番かと緊張していがそんなことはなかった。
 白髪は「おっと、ついたよ。復習は一旦ストップ。」と足を止めた。目の前には大きな両開きのこれまたオンボロドアがあった。「新兵を連れてきたよ〜!」と白髪ぱっつんは扉を勢いよく開けた。
 扉の先には12乗ぐらいの部屋があり、ここだけやけに綺麗だった。壁は最近ペンキで塗ったのか、所々綺麗な場所もあった。中央には木製の丸机があり、その周りには二人の人物が立っていた。部屋の中に入ると白髪ぱっつんが「ようこそ、黒龍(くろたつ)班へ!俺がここの隊長の黒龍 有一(くろたつ ゆういち)で、あの怖そうな顔してるのが、副長の氷織 名(ひおり めい)。美人なお姉さんだと思われるのが、三重野風舞姫(みえの ふぶき)。計三名で黒龍(くろたつ)班は編成されてるよ。」と紹介を終えると後ろから突然、三重野(みえの)先輩が黒龍(くろたつ)隊長の頭を殴って「あなたが氷織(ひおり)副長で怖い顔をしてるのが黒龍(くろたつ)隊長でしょ。新人に嘘を吹き込まないでよ。」と叱っていた。どうやら白髪ぱっつんは嘘を言っていたらしい。185cmはある大柄の男が黒龍(くろたつ)隊長で、俺とそんなに身長が変わらなく細マッチョという表現が一番わかりやすく胸はBカップぐらいはある女性が三重野(みえの)先輩。そして白髪ぱっつんが氷織(ひおり)副長である。
 その後、僕たちはとても簡単な自己紹介をした。
千輪 大地(せんり だいち)です。()魔法が使えます。」
荒切 鍛(あらきり かたし)(かぜ)魔法が得意だ。」
癒月 二葉(ゆづき ふたば)です。()魔法を使えます。けど基本戦闘は苦手です。」
 一通り自己紹介が終わると氷織(ひおり)副長が驚いた様子で「七大魔法(ななだいまほう)が二人もいるのか珍しい。」と言い、思い出したかのように「じゃあここで復習の続きといこうか。七大魔法(ななだいまほう)とはなんのことかな?(かたし)くん。」と問いかけてきた。荒切(あらきり)は「七大魔法(ななだいまほう)は始まりの魔法とも言い、火 水 木 鉄 土 光 闇 の7種の魔法。これくらい覚えてる。」と答えた。氷織(ひおり)副長は「正解!!」と言うと「じゃあ、(かたし)くんのような七大魔法(ななだいまほう)ではない魔法はどういった経緯でできたかわかるかな?大地(だいち)くん。」急に俺を指名した。俺は少し焦ったがすぐ冷静を保ち「はい。まず魔法はその人の中にある魔力に刻まれている魔法因子(まほういんし)の種類の割合によって使える魔法が決まり、そして違う魔法因子同士を交配させることで新しいものが生まれます。」と答えた。我ながら完璧の回答だと思っていたが氷織(ひおり)副長は「惜しい、また突然変異で生まれる場合がある、と付け足してたら満点だったな。」と言った。
 確かに教練場でそんなことも言っていたが俺は嘘だと思っていた。今までそういう人物を見たことがないからだ。そんなことを思っていると氷織(ひおり)副長は「まぁ突然変異なんて信じてないか。事例も少ないし。でもね、ほんとにあるからね。突然変異。俺がそうだから。」と自分を指さした。「俺の両親は二人とも(いわ)魔法を使っていたけど、俺は(こおり)魔法なんだよね。普通、(いわ)魔法と(いわ)魔法はどう考えてもその間に生まれた子は(いわ)魔法になるのがセオリーだけど、まれに突然変異する場合もあるんだよね。原因はわかってなくて頑張って研究してる人がいるらしいよ。」と氷織(ひおり)副長は言った。
 俺は『そんなこともあるんだな。(こおり)魔法はどんなことができるのかな?黒龍(くろたつ)隊長と三重野(みえの)先輩はどんな魔法を使うのだろう?』と色んな疑問が頭を巡った。そして俺は思い切って「隊長達の実力が知りたいです。」と聞いてみた。すると隊長達は待ってましたと言わんばかりの顔をして「模擬戦だ。」と言った。
 部屋を出て廊下の奥に行くとグランドのような場所があった。あんまり大きくはなくバスケットコート2面ぐらいしかない。それから隊長は模擬戦のルールをハキハキと説明しはじめた。「一対一のタイマン。どちらかが動けなくなるまたは、ギブアップを宣言をするまで続けること。思いっきり戦え、傷は俺が治す。さあ、トップバッターは誰かな?」と言うと俺達の誰かが名乗り出るのを待っているようだ。「わ、私行きます」と二葉(ふたば)が恐る恐る名乗り出た。すると「じゃあ、私がお相手します。」と三重野(みえの)先輩が前に出た。