はるか昔、魔族(まぞく)という存在が突如として生まれた。そして魔族は人族から9割以上の土地を手に入れたのだ。当時魔族の進行に抵抗していた人族は、鉄の装甲でできた戦車や辺り一面を消し飛ばす原子爆弾、ひとりでに動き突撃するAI兵器、触れたら一瞬で灰と化すダスターといった技術があったが、魔族はその程度の攻撃は効かない。頭を潰されようとも、胸をつり抜かれようとも。魔族はその傷から再生するのだ。それでも人族は抵抗し続けた。その過程で力がない魔族を捕まえ研究を行っていた。それから数百年で人族は魔力(まりょく)という魔族の力の根源でもあり、最大の弱点を発見した。魔族は魔力のこもった技で致命傷を負うと再生しないと。発見した当時は致命傷を与えるほど魔力を制御出来ない人類ばかりだったが徐々に魔力を使いこなせる人族が現れ次第に魔法(まほう)というものが出来たという。極わずかな人類が7種のどれかの魔法を使っていたが、少しずつ魔力を制御できる人族や魔法の種類が増えていった。
 「そして我々の祖先は魔力を使って特殊な大きな壁を作った。しばらくの間は、魔族の脅威から離れ、平穏が続くと思われたが、魔法を使った犯罪が起きるようになった。また、最近では外にいる魔族の脅威も計り知れない状況だ。それらから市民の平和を守ることが我ら魔法防衛隊(まほうぼうえいたい)の使命であり意義である。それを忘れずに君たち新兵には各班で活躍してもらおう。」と新兵教育長官の最後の話が終わった。
 周りをみると俺を含めた数人の魔法防衛隊の新兵たちがグラウンドに立たされていた。ここは「パラぺクス」。壁の中の人が生活ができる土地。その中の中央東区に存在する魔法防衛隊を育成する施設、教練場(きょうれんじょう)だ。魔力を持つ人間は強制的にここに通わされる。17年もの間。これも魔力を持つ人がパラペクスないで暴れないようにする上層部の政策である。生まれてから7歳になるまでは両親とともにここの宿泊施設に泊められ、8から15歳までは魔力の勉強と社会で使える一般的な教育を受ける。8歳になったら親とはそれ以降会うことは無い。施設にある寮で生活をする。そして、15〜17歳までは自分の魔法をさらに磨き魔法防衛隊でも役に立てるよう訓練をつむ。
 亡暦500年4月、そんな俺たちは今日をもってここを卒業して本格的に魔法防衛隊で任務をこなす。みんな活気ついた目をしていた、俺の隣のやつを除いて。口を大きく開けてあくびをしている隣を見ていると、突然誰かが俺に話しかけてきた。「何を見ているのだ?千輪 大地(せんり だいち)新兵。」さっきまで皆の前で話していた長官だった。俺は慌てふためいて「い、いえ!何でもありません。」と返すと「魔法防衛隊の一員としての自覚を持ちなさい。」と長官に怒られてしまった。
 『これから魔法防衛隊として活躍する予定が…』、俺はさいさきが不安になった。『それもこれも、隣でぼーとしてる同じ班に配属となった、荒切 鍛(あらきり かたし)のせいだ。確かに俺より威厳があって長官も驚くほどの実力を持っていたかもしれない。だからといってボーとしてあくびをするやつは注意をせず、ちょっと隣が気になってよそ見しただけの荒切(あらきり)よりも背が小さくて威厳もない俺だけを注意したことは許せない。荒切も注意されるべきだ』と心の中で長官に怒っていた。それと共に黒髪に水色のメッシュ入れてる荒切(あらきり)にも怒りを覚えた。
 「これにて解散とする。各自それぞれの班に向かいたまえ。」と長官の一言で一斉に行動し始めた。俺も行こうと思い同じ班の荒切(あらきり)に話しかけた。「よし、荒切(あらきり)。行くか。」すると遠くの方から「待ってくださーい。置いてかないでくださーい。」と誰かが走ってこちらに向かってきていた。
 「えっと、黒龍(くろたつ)班に配属ですよね?千輪(せんり)さんと荒切(あらきり)さん。私もそうなんですよ。」そこには俺よりかは少し小さい、155cmくらいか。後ろ髪でリボンを作っている黒髪ハーフアップのだいぶ胸のある可愛らしい女性隊員がいた。荒切(あらきり)が「確か名前は…」とつぶやくと「えっと、私は癒月 二葉(ゆづき ふたば)です!おふた方と同じ黒龍(くろたつ)班の配属になります。」黒龍(くろたつ)班。黒龍有一(くろたつ ゆういち)が率いる南区を管轄としている班だ。
 「じゃあ、自己紹介も済んだことですし、向かいますか。」と二葉(ふたば)言った。それに俺は「おう!」と答えた。
 それからだいぶ時間がかかって拠点のある住所にたどり着いた。「ここだよな。黒龍(くろたつ)班の拠点は?」俺は疑問を隠しきれずに、二人に聞いた。「はい、ここですね。」と二葉(ふたば)は少し引き気味に答えた。あの魔法防衛隊の一部隊の拠点とは思えないほどの風貌に俺は思わず、「いや、廃墟かよぉぉぉぉぉ!」と声を上げた。