結乃(ゆの)side】

それはいつもと同じでなんの変哲もない学校からの帰り道での事だった。

えっ!?

私は目を見張った。

夕方4時30分。

夕日が寸断されたひとけのない路地裏。

そこに、男の人がいたから。

いや。正確には“倒れている”に近い感じ。

彼はぐったりと壁に背をもたれさせ、地面にしゃがみ込んでいた。

目を凝らすと額から真っ赤な血も流れている。

大変!!

「あのっ…、大丈夫ですか!?」

咄嗟に身体が動いた。

駆け寄って、肩を揺らしてみるけど反応はない。

まさか…、死んでる!?

「あの…!!」

「…」

「あの……っ!!!」

「…」

何度呼びかけても返事は一向にない。

えーと、こういう時どうすれば…

頭を悩ませた挙句、彼の口元に手の甲をやる。

「あっ…よかった…。息ある…」

手の甲にふんわりと息が触れたので安堵のため息を吐き出した。

その時。

「ん…」

彼が唸り声を上げて。

そして俯いていた顔を上げた。

次の瞬間。

ーーパチリ

何かが弾けるように目が合った。

わっ、かっこいい人…っ

無造作な前髪の隙間から切れ長の瞳が私を見つめる。

初めから終わりまでシュッとした無駄のない輪郭は、もはや作り物みたい。