翌日。
米と野菜と酒、それに絹織物が法外なほどに奉納され、養父は目を白黒させていたらしいが、可依はそれを夕方まで知らずにいた。

……夢占の反動と初めての夜の疲れから、泥のように眠りこけていたからだ。

「明晩も、来られますか」

「……なんだ。来て欲しくなさそうな物言いだな。身体がつらいのか」

「いえ、そうではなく」

尊臣(おとこ)の腕にいだかれたまま、いたずらに素肌をなぞられて、可依は身をよじる。

乱れた合わせを引き寄せながら、じっと男を見上げる。

「わたくしは、巫女でいたいのです」

「霊力を失ってはいないということか」

俗に、男を知ると霊力が失われるなどというのは、迷信だ。

たかが男と通じたくらいで霊力(ほこり)を無くしてたまるものか。

「ええ。未通娘(おとめ)でなくとも、巫女は務まるのです」

「……俺に口添えをしろと?」

面白そうに、尊臣は可依を見やった。

迷信などに左右されず、合理的に物事を運ぶこの男なら、可依の処遇もうまく取りはからうはずだ。

───大神社の主祭であり、神官長の養父ですら一目を置かざる得ない相手なのだから。