「正真正銘の妬み、ね。そいつは重力がエグそうだ」

「特別な人の特別になりたかった。でも誰も蜜くんの一番や特別にはなれなくて、誰も蜜くんの心に触れることはできなかった。唯一、一人以外は」

「なんの話?」

「蜜くんの心に触れることができたのが、夜乃とばりだったんじゃないの?」

「…本当になんの話?俺さ、きみに夜乃さんの話なんかしたことないよね?ただ一緒に生徒会に居たってだけなんだけど」

「知ってるよ」

「何を」

「夜乃とばりが居なくなっちゃうちょっと前に。夜乃とばりのクラスで二人で話してたでしょ」

「…あー、あの日ね。そうだけど。それが何」

「違うって思った」

「違う?」

「たまたま通りかかっただけだから。会話まではもちろん聞いてないよ。でも蜜くんの表情。二人をまとう空気感。全部が、この学園のどことも違う。誰とも違う。私の知らない世界を見てるみたいだった。相手が夜乃とばりだったから。正直、嫉妬もしなかった。だから私、本当はずっと思ってた。蜜くんの心には一生誰も触れることなんてできない。あの子以外には、って。でも、私は体でさえもあなたに触れることはできなかった。落ち込んだよ。ちゃんと、落ち込んだ」

ふ、と笑った来栖が、ちゃんと落ち込むほどの関係性が俺達の間にはない。
でもちゃんと、心を動かして落ち込んだり悲しんだりできる人間らしさが羨ましかった。