「自分達の欲や優越感を満たしたい為だけに蜜くんに媚び売ってるって言われて。なんてこと言うんだろうって最初は思ったよ」

「事実だからね。でもそれでも、もういっかって思ったんだ。きみ達は俺と遊んで満たされて、俺は生徒会長として駒を手に入れて…って、ごめん。コレが最低だって話だよね?」

一瞬、キュッとくちびるを結んで、来栖は静かに一呼吸ついた。

「でも蜜くん言ったじゃん。ただの人間なんだって。痛む心だって持ってるんだって。もう…絶望することに飽きちゃったんだって」

来栖が伸ばしかけた手のひらをそっと下ろした。
気づかないふりをした。

「何か、諭そうとしてる?宗教の勧誘かなんかじゃないよね?」

「ちゃんと聞いて」

「なんなの…」

「同じクラスに居て、私達とおんなじ年齢の、蜜くんの言う通り。ただの男の子で…。でもやっぱり蜜くんは特別で」

「勝手に特別にしたのはそっちだろ」

「蜜くんはそう思うかもしれない。でも凡人のこっち側からしたら蜜くんはあまりにも沢山のものを持ち過ぎてる。蜜くんは″出来る″から理解できないかもしれない。勉強も運動も努力したってどうにもできない人だっている。努力すればちょっとくらいはそりゃどうにかはなる、とかそれじゃダメな時もあって…。完璧になんてもっとなれない。それらを持ち合わせていたって全員が生徒会長になれるわけじゃないし、容姿だってそうだよ…。自分の努力じゃ手に入らないものもある」

「なんで俺が完璧だって決めつけるの。何も知らないくせに」

「なんにも知らないからだよ。知らないから、特別に見えてしまう。完璧に見えてしまう。正真正銘の妬みとして」