「渇き?」

「蜜くん、あの日私に諦めてるって言ったよね」

「言ったっけ」

「言ったよ。蜜くんに嫌われてたことにショックだった私に、好きだとか嫌いだとかそんなんじゃないって。諦めてるだけだって」

「あはは。ごめんね。まともに話したこともないのに酷いこと言ったんだね」

来栖はゆっくりと首を横に振った。
学園で見る来栖はもう少し派手な印象だった。

それがメイクやヘアセットによるものなんだってことがなんとなく脳裏をかすめた。

すっぴん、というわけではなさそうだけどナチュラルなメイクに、
いつもは巻いているらしい金色に染めた髪は今日はストレートで肩の下まで伸びている。
ハイトーンカラーにしている割りには艶があってきれいな髪だと思った。

小さい手、小さい爪。
ピカピカの桜色のネイル。
似合っているけれど、来栖には言わない。
来栖を喜ばせるメリットなんて、俺にはなかったから。