「ごめんね。嘘だよ」

土曜日。
自室に俺を招き入れた来栖は開口一番にそう言った。

それはそうだ。
そんな鍵に心当たりは本当に無いし、最初から「俺の物かも」なんて思っていない。

「なんでそんなくだんない嘘ついたの」

「ただの口実だって分かるでしょ?」

「話したいことがあるって言えばいいじゃん。てか話すだけなら学校でよくない?」

「蜜くんが私の為にどこまでバカになってくれるか試したかったの」

「くだんないね。帰るよ」

「ちょっ…待って待って、ごめんってば!」

来栖のほうは見ないで長めに息を吐いた俺を来栖は上目遣いで見上げた。

「あのさ」

「うん」

「なんなの、この前から」

「なにって…」

「やたらと絡んでくるじゃん。もうあの日で終わった話だし俺はどうだっていいんだけど?」

「蜜くんってさ」

「なに」

「女の子達にどんだけ最低なことしてもその瞬間は大事に扱ってくれるって一部の女子には評価されてんだよね」

「は…何それ。気持ちわる…」

「気持ち悪いってなによ!?」

「俺もそいつらもだよ!」

急に大声を出した俺に、来栖はビクッと肩を震わせた。

「何が大事に扱ってくれる、だよ。大事になんかしてるわけねーだろ。どうだっていいんだよ。お前らが自分のプライドを守りたい為だけに俺を利用してることも、何もかも面倒でそんなことにいちいち感情動かすこともバカらしいから望む通りに酷く扱ってるだけだろ!?最低とかやさしいとか言いたい放題、気色悪いんだよ!」

「でも私のことは抱かなかった」

「は?」

「私がその気になっても私のことは抱かなかったじゃん」

「お前が″そんなんじゃない″って否定したからだろ」

「私を繋ぎ止める為なら、生徒会長として駒が欲しいなら好きにできたんじゃないの?そうすれば私きっと、蜜くんに夢中になってたって分かってんでしょ?なのに蜜くんは私を抱かなかった。なのに…あの子のことは抱くんだね」

「なんの話?」

「生徒会の後輩。夜乃とばりの友達」

佐藤アマイのことを言っているのか。
なんでそんなこと…。