拗ねているのか本気で怒っているのかは判然としないけれど、瞳を潤ませて佐藤は言った。

正直、俺が責められる筋合いはないけれど、幼馴染の事故によって夜乃が引き合いに出される可能性を俺だって考えたのは事実だ。
佐藤が気にするのは当然だとは思う。

「ごめん。佐藤さんに怒ってるわけじゃないんだ。泣かないで」

「泣いてなんか…」

「うそ」

人差し指で佐藤の目尻に触れたら、ギュッと目をつむった。

「私が先輩にしつこく連絡して、押し付けるようなこと言ったのが悪いんです」

「きみは間違ってないよ」

「でも…」

「本音を言うと、幼馴染の彼のことまでは背負い切れない。けどさ、夜乃さんのことを心配しているのはもちろん本当だし。胸糞悪いけどさ、こう言う″事故″って、ネット民が騒ぐだろ?自殺にしろ″被害者″にしろとことん調べ上げられてさ。夜乃との繋がりが炙り出されるのも時間の問題だと思う。その時は生徒会長として何ができるかなって。今のうちにちゃんと考えとかなきゃね」

「ごめんなさい。私も頼りっぱなしじゃなくて親友としてしっかりしなきゃ。こんなんじゃとばりが帰ってきたらガッカリさせちゃいますよね」

「ね、キスしよっか」

「…え?」

きょとん、とした佐藤の丸い目。

当然だと思う。
いきなりこんなこと言って、頭がどうかしてるって思われても仕方ない。

それでも構わずに佐藤の腕を強く引いて、乱暴にキスをした。
佐藤は抵抗しなかった。

「佐藤…アマイは何があっても夜乃さんと俺の味方でいてくれる?」

「どういう…」

「いてくれる?」

俺の舌先が佐藤のくちびるに触れる。
佐藤は小さくコクンと頷くだけで精一杯だった。

「約束だからね」

「ん…」

「絶対だよ」

「はい…」