夜乃とばりはそういう存在です。
佐藤は、はっきりとした口調で言い切った。

夜乃という光があまりにも眩し過ぎるから怖くて逃げたんだ、と。
自分が何をやっても、それが失敗でも成功でも、どうせ他者の目には自分は映らない。
その事実に安堵している自分もいたんだ、と。

佐藤は自嘲気味に笑った。

「だったらそのままで良かったんじゃないの」

「最初は戸惑いました。とばりが失踪したと先生に告げられた日。意図せずクラス全員が私に注目しました」

「親友ってそういうもんだから。なんでも知ってて当然だって、なぜが全員が思ってる」

「なんにも知らないのに。とばりは私に何ひとつ話してくれてなんかいませんでした。だから急に大勢の手によって影から引っ張り出されて戸惑いました」

「そうだろうね。冬眠中の熊だって急に引っ張り出されたらたまんないだろうし」

「ふふ。…それで最初は私だって混乱してたし何がなんだか分かんないのに、なんでそっとしといてくれないんだろうって思いました。もしかして私がとばりに何か危害を加えるようなことをして隠してるって思われてるのかなって」

「隠してるの?」

「まさか」