「みつ…それって…」

「安心して、アマイ。あなただけじゃないから。ね、蜜先輩?」

俺の視線に気がついた来栖がビクッと肩を震わせた。
アマイは腰が抜けてしまったのか、その場にストン、とヘタリ込んだ。

「アマイ」

「みつ…」

差し出した俺の手に触れるけれどアマイは立ち上がれない。
代わりに俺がアマイと同じ高さでしゃがみ込んだ。

「きみは本当にいい子だったよ」

「みつ…わたしみつの…蜜の為に…ッ!」

「うん。分かってる。アマイが居たから全てうまくいったんだ。アマイの存在は必要だったよ」

「じゃあ…」

「アマイ。俺と最高にとびきりの秘密、共有しよっか?」

佐藤の瞳がキラッと光を放った気がした。

絶望からの期待。
いとも容易く心を蝕んでゆく。

「秘密って?」

「曖昧な言葉じゃ生ぬるいよね」

「…うん」

「本当にしちゃおうよ」

「本当に?」

「殺してくんない?来栖のこと」

くすくすと無邪気に笑う夜乃とばりの声で、狭い部屋が満たされていく。

夜が濃くなった。

雪はとっくにやんでいた。