監禁、と言っても縛り付けたり暴力で支配したりと、手荒な真似は一切していない。

世界で唯一の宝物にそんなことするはずがない。

愛したいだけだった。

愛されたいだけだった。

愛を知らない俺達だからこそ、世間一般になんて理解されない尺度で繋がっていたかった。

手荒な真似をしないでいられたのは夜乃のおかげでもある。
どんな状況下に陥ろうとも、夜乃は決して俺の期待を裏切らないどころか、遥かにそれを上回った。

混沌から目覚めても俺に薬を飲まされたことを咎めもせず、
またこちらが困惑するほどにすんなりと状況を理解して、受け入れた。

正真正銘、壊れていると思った。

夜乃は聡明に微笑んだ。

あなたが私の命を握って、と一生忘れることのできない声で囁いた。

非現実的ではない、実家での監禁生活は驚くほどに弊害なく半年間を乗り越えた。

二階には母さんの部屋、これは父さんが生きていた頃は夫婦の部屋だった。
それから俺の部屋と、父さんが使っていた書斎。

そしてこの物置部屋として使っているスペースだった。

父さんが亡くなってから、母さんは仕事の時間をグンと増やした。
俺への申し訳なさはひしひしと感じていたけれど、
もう絶対的に母親の手が必要な年齢でも無かったし、心がすれ違うこともなく、俺達はお互いの生活を受け入れた。

元々、ほとんど季節が変わる頃にしか出入りされないこの部屋に、家にすらほとんど居ない母さんが立ち入ることはないと分かっていた。

忙しいだろうから掃除は俺がするよと提案すると、母さんは喜んでそれを受け入れた。

それでも母さんだってまったくの無休なわけではない。
対策として、部屋のドアに外から施錠できる鍵を取り付けた。

それにすら、母さんは気づいていなかったけれど。