十二月二十四日。

当然だけど部屋のエアコンは冷房から暖房を毎日必要とする季節に変わった。
乾燥し過ぎると喉にも良くないから、夏と同じようにたまに窓を開けて空気の入れ替えをした。

夏と違って痺れるような冷気が風と一緒に吹き込んできて「はぁ…」と指先を温める吐息が、狭い部屋にぽつん、と落ちる。

今日も雪が降っている。
ホワイトクリスマス。

今日にぴったりな景色だと思った。

約束の三十分前に佐藤はインターホンを鳴らした。

ホワイトクリスマスに合わせるようにモコモコの真っ白な手袋に、トナカイ柄のマフラー。

ピンクブラウンのダッフルコートの下は、ニットワンピースだろう。
雪よりは少し生成がかったクリーム色だった。

「メリークリスマス」

「うん。ごめん、ケーキとか買っとけばよかったかな」

「ううん!適当にお菓子は買ってきたから一緒に食べましょ」

佐藤は地元では有名な洋菓子屋さんの紙袋をうれしそうに振ってみせた。

「ごめん。気が利かなくて」

「もー!ごめんは無し!てかごめんなさい。私もケーキじゃないんです。やっぱこんな日は予約じゃないとショートケーキでも厳しいみたいで。焼き菓子にしました」

「大好きだよ」

「焼き菓子ですか?」

「うん」

「なーんだ。″焼き菓子が″かー」

佐藤は上目遣いで俺を見上げてから、クスッと笑った。

「入って。寒いだろ」