二学期の終業式が終わるまで来栖とは接触しなかった。
佐藤とは生徒会で顔を合わすけれど、佐藤が望むようなことはしない。
指一本触れてもらえない佐藤には徐々にフラストレーションが溜まっていっていることは容易に見て取れた。

「蜜…!」

十二月二十三日。

終業式が終わって、十一時過ぎには下校の号令がかかった。
教室を出ると、その前で待ち構えていた佐藤に呼び止められた。

「早いね。もう終わってたの」

「はい。待ってました」

「まるで忠犬だね」

「生徒会の集まりもないからこうするしかなくて…」

「連絡くれればよかったのに」

「どうしても会いたかったんです」

「なんで?」

「なんでって…なんでそんな意地悪ばっかり言うの」

「あはは…ごめんね。ね、アマイ」

「はい」

「明日まで我慢できる?」

「え…」

「明日はさぁ、イブじゃん」

「…!そう、ですね」

「″特別″なことは、特別な日にしたいじゃん」

「ずるい…」

「なーんにもずるくないよ。明日、夕方の七時くらいにうちに来れる?」

「いいんですか?」

「俺が誘ってるんだから。アマイこそ、いいの?」

「蜜より優先するものなんてないです」

「可愛いね。じゃ、約束だよ」

ぽんぽんって頭を撫でたら、佐藤は石になったみたいに固まった。
いつまでも俺の行動に慣れないアマイに、さすがに(ほだ)されそうになることはある。

普通の、ありきたりな感情で人を愛せることがどんなに素晴らしいことか。
もう一度やり直せる赦しが俺にもあればよかったのに。