全校生徒へ、完全下校を促す校内放送が流れた。

空き教室のスピーカーはだいぶ古くなっているのか、音声が所々途切れている。

完全下校の時間になってしばらくすれば校内の見回りが始まる。
来栖は慌てて乱れた制服を整えた。

「蜜くん、あの…」

「冬休み」

「え?

「冬休みになったら連絡する」

「それまではしないの?」

「しない」

「なんで?」

「焦らされるの好きでしょ?」

「…っ」

「いい子にしてて」

チラリと時計に向けた俺の視線に気がついて、来栖はバタバタと空き教室を出ていった。
ドアを出る時に、一瞬戸惑うような仕草をした背中が気になったけれど、
その疑問はすぐに解決した。